メインのルシアンのために、サブボリスの釣り・料理・調合スキルを
ちょこちょこと上げてます。
集めた魚を持って行くと姜太公さんに褒められました。
『…………。(ハゼから直接叩き落したのは伏せておこう)』
要求された魚によっては釣るよりも、ハゼをぶん殴った方が早い気がしたもんで……
以下、硝子の鳥 後編を置いてます。
捏造警報引き続き発令中。
硝子の鳥 後編
厩に駆け込むと、ボリスは一つ息を吐いて呼吸を整えてからルシアンの馬を探す。
褐色の毛を持つルシアンの馬はちゃんといた。
ちょうど世話をしていた番人がボリスに気づいて会釈をする。
「こんにちは。こんなところにいらっしゃるとは珍しい。お一人ですか?」
「えぇ、ルシアンを探していまして。こっちに来ませんでしたか?」
ボリスも会釈して、ルシアンの馬を撫でた。
少し、息が荒い。
――まるで先ほどまで走らせていたかのように。
「いえ、今日は若様は……と言っても嘘だと見破られてしまうでしょうね。」
苦笑いをしながら番人はボリスを見た。
「ということは、ルシアンは街へ行っていたのですね。」
「おっしゃるとおりです。すみません、一応若様に口止めされておりましたので。」
申し訳なさそうに言う番人にボリスは横に首を振った。
「いいえ、ルシアンが無理を言ったのでしょう。……ひとりで行くなと言っておいたのに。」
何かあったらどうするつもりだとボリスが呟くと、少し宥めるような口調で番人は言った。
「使用人もついて行きましたので、若様はおひとりではありませんでしたよ。
どうか叱らないでさしあげてください。」
自分はそんなに怒っている様に見えるのだろうか。
仕事の邪魔をしたことを詫びて、ボリスは厩を去った。
屋敷に戻っているのなら、わざわざルシアンを探す事もない。
使用人が今頃ルシアンを急かして準備させているだろうから。
どことなく空虚さを感じながらボリスは部屋へと戻った。
夜の静けさに混じって、パーティー会場で演奏されている曲が聞こえてくる。
面倒だなんだと、ぼやいていたルシアンもボリスの部屋へ逃亡してこないところをみると
真面目に義務を果たしているのだろう。
もうすぐ日付が変わる。
懐中時計を顔の横に置いて目を閉じると、秒針の刻む音だけがよく聞こえた。
ボリスに言われなくても護衛をつけて街へ下りたこと。
自分の務めを果たすためパーティーに参加すること。
ルシアンのとった行動は間違っていない。
では、一体何が引っかかっているのだろうか。
これではまるで、ルシアンの進歩を少しも喜んでいないみたいではないか。
起きていてもつまらないことを考えるばかりで、寝てしまおうかと思っていると
部屋の扉が2度、ノックされた。
続いて、くしゃみひとつ。
待たせては気の毒かと、起き上がってボリスが扉を開けると
寝巻きにストールを羽織ったルシアンが、
再度ノックでもしようとしたのか中途半端な位置で拳を作った格好で立っていた。
「何だ、よかった。ボリスまだ起きてたんだね。」
寝てるんだったら勝手に入ろうと思ったけどと言いながら
ボリスの横をすり抜けてルシアンは部屋の中へ入っていく。
腕を捕まえそこねたボリスは、ひとまず扉を閉めて疑問の一つを口にした。
「ルシアン、パーティーはどうしたんだ?」
「ちゃんと出たよ。夜も遅いし、もう寝てもいいってお父さんが言ったから
抜けてきた。」
答えながらもルシアンはきょろきょろとボリスの部屋を見回している。
テーブルの上に片手に持っていた小さな箱を置いて、がたがたと椅子を引き出すと
窓のそばへ寄せた。
靴を脱いで素足になり、椅子の上に立って肩にひっかかっていたストールを
無造作に床に落とした。
「っとと、忘れてた。」
ひょい、と椅子から飛び降りてぺたぺたとテーブルへと戻る。
ガラスがぶつかり合う音を立てながら、箱から取り出す様子をボリスが横に立って覗き込むと、
ルシアンはソレを持ち上げて見せた。
蒼いクリスタルガラスの鳥の下に、長さの少しづつ違うガラス棒がぶら下がっている。
ガラス棒の一本を人差し指で弾くと、再度涼やかな音色を奏でた。
「うん、いい音。」
ルシアンはそう言うと、もう一度椅子に登って窓のカーテンを片側だけ開き、
鳥の胴に穴を開けて通してあった紐をカーテンレールにくくりつけた。
落ちないかどうか確認しながらそっと手を離すと、わずかに揺れたあと鳥は止まった。
「これでよし!ボリス、どう?気に入った?」
「綺麗だが……あれは一体何なんだ?」
「あれ?知らない?夢鳥って言うんだけど。
えっと、新年に初めて見る夢がいい夢だったら、その年がいい年になるって言われてて、
あれを飾って眠ったら、いい夢を運んできてくれるんだよ、っと。」
ジャンプして椅子から床に飛び降りると、「わ、冷たっ!」と言いながらルシアンは
ボリスのベッドに駆け寄ると飛び乗った。
「もしかして、夕方まで戻らなかった理由はこれなのか。」
「そう、年末にボリスと街に行ったときに見つけたんだ。絶対今日買いに行くからって
取っといてもらったんだよ。」
「それくらいなら使用人にわざわざ護衛を頼まなくても俺が一緒に行ったのに。」
「うーん……内緒にしといてボリスをびっくりさせるつもりだったんだけど、
思ったより帰ってくるのがぎりぎりになっちゃって。そっちは失敗したなぁ。」
毛布をめくりながら、あくびをひとつ。
「でも、ボリスが寝るのに間に合ってよかったよ。」
そのままベッドに潜り込むルシアンを慌てて揺らす。
「ルシアン、寝るなら自分の部屋に戻らないと。」
「むー……僕そんなに寝相悪くないよー。」
ボリスを蹴り落としたりしないから~なんて既に半分寝かけている。
「そうじゃなくて、お前の部屋がカラだと様子を見に来た人が大騒ぎするだろう!」
「だいじょうぶ、ここにいるって誰でもわかるって……。」
お気に入りだと言って苦笑した執事。
ルシアンの行方を聞きに来た下僕。
「――俺は、ルシアンのお気に入りだからか?」
揺り動かしていた手を止めてボリスが呟きを落とすと、
ルシアンが目を閉じたまま眉根を寄せて毛布から顔を出した。
手探りでボリスの髪を掴むと少し引き寄せて寝ぼけた声だがきっぱりと言った。
「ちがう。お気に入りじゃないよ……友だちだろ。」
「――。」
ボリスの答えを待たずにルシアンは寝息を立てはじめた。
友人になるように言われてこの屋敷に連れてこられたボリス本人より、
ルシアンの方がよっぽど『友だち』になろうとしていた。
『若様』が飽きるまでのおもちゃの一つだと、ルシアンを知るほとんどの人が
ボリスの事をそう思っているだろうに――
「……うん、びっくりした。」
自然と笑みがこぼれる。
少し端に寄って眠り込んだルシアンの横に、ボリスも潜り込んだ。
明日は一緒に遊ぶ約束だ。プレゼントの礼もろくにできていない分、
多少のわがままは聞いてやらなければ――
「おやすみ。」
いい夢を。
――――――――――
密かに続いていた初夢がらみ。
枕の下に七福神の乗った宝船の絵を置いて寝るといい夢が見れる、を
硝子の鳥に変えました。
ちなみに宝船絵の方は、『それでも悪い夢を見ちゃったら、絵は川に流してねv』と
ばっちりアフターケアまでついてるみたいです、が……
――ガラス、流したり燃やしたり出来ないよなぁ……。
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