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TWのプレイ記と二次創作が転がってます。
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プレイ記が長めになったので、続き物話は別に置いておきます。

折り畳み。↓



沈めた旋律 3



「待ってってば、ボリス。ひとりでどこ行くんだよ。」

ばたばたと騒がしい足音と声があとからついてくる。
仕方なくボリスが立ち止まって後ろを振り返ると、先ほどの青年が
小脇に荷物を抱えて走ってくるのが見えた。

「何だ?」
「なんだ、じゃないよ。勝手にさっさと行っちゃうんだもん。」

追いついてくるとカバンを持ち直して、ルシアンはふぅ、と一息ついた。
無言でいるボリスをルシアンは見つめ返して、『ん?』と首をかしげたあと
何かに思い当たったのか、ぱちんと両手を合わせた。

「あ、そっか。一応名前はみんな言ったけど、七人分は多いし混ざっちゃうよね。
 僕はルシアン、ルシアン・カルツだよ。」

ボリスに言うって何か変なかんじ、とへらりと笑う青年をボリスは改めて観察する。
そう言えば、最初に見たのもこの青年だったなと今更ながらボリスは思い出した。
年は自分と同じか、少し下だろうか。
くるくるとよく変わる表情に、しぐさ、それに言動がこの青年を幼く感じさせる。
しかし、この子供のように屈託無く笑う青年はなぜ自分を追いかけてきたのだろうか。

「それで、何の用なんだ?」

自分の記憶が無いとはいえ、日常生活に支障をきたすほどではない。
ここがナルビクだという事は知っているし、宿屋がどこにあるのかもわかっている。
誰かについていて貰わなければならないほど、不安らしきものを抱えている訳でもない。
むしろ誰かが傍にいることの方が落ち着かないような気がする。

「だって、ボリス。場所の名前とか知ってても
 自分が帰る所はわからないんじゃないの?」

そもそも帰る場所があることにも思い当たらなかった。
冷静に考えてみれば、自分の名前を知っているこの青年や、それに先ほどの人たち。
自分とつながりがあるということは推測できるだろうに、なぜ自分の情報を
積極的に収集しようとしなかったのだろうか。
自覚は無いが思考力の低下でもしているのだろうか。
あごに手を当てて考え込んでいると、ボリスの服の二の腕の部分をルシアンが引っ張った。

「あのね、僕とボリスは同じ宿に泊まってるんだ。
 だから一緒に帰ろうよ。」

服を掴んでいた手でルシアンはボリスの手を握り、そのまま宿の方へと歩き出す。

「それに僕とボリスのこととかみんなの事とか、いっぱい話さなきゃいけないことも
 あるしね。話をしている間にボリスも何か思い出すかもしれないだろ?」

ね、と笑って振り返るルシアンの顔を見ながら仕方なくボリスも足を踏み出した。
手を引く青年の事は何も知らないが、少なくとも悪意を持っていない事だけは確かだ。
それに、この様子だときっと彼とは親しかったのだろうとボリスは思った。
話をしている間に、なんてそんな気楽な事は考えていないが、
無くす前のことを情報としては覚えることができる。

例えば、彼の名前。
さっき自己紹介されたのだから、まずはそこから始めればいい。
道案内をしてくれているつもりなのだろうが街中で手を繋ぐ必要はないし、
とりあえず手を離してもらおうとボリスは彼の名前を記憶から呼び出そうとした。

『――!』

額から後頭部にかけて線が走ったような鋭い痛みを感じた。
繋いだ手を振り払って、痛みを追うように額に当てる。
走ってもいないのに自分の鼓動の音が煩い。

「わ、っとと――どうしたの?!」

繋いでいた手を払いのけたボリスを、ルシアンは振り返って目を見開いた。
慌ててボリスの顔を覗きこむと、何かの痛みに耐えるように
ボリスは目を閉じて歯を食いしばっている。

「ねぇ!ボリス、大丈夫?!どこか痛いの??」

両肩を掴んで必死にかけられている声が耳障りで仕方が無い。
ゆっくりとボリスが目を開くと泣きそうな顔が見えたが、
気に留めることでもないと即座に視線をそらして、
ボリスは肩にかけられていた手を無造作に退かせた。

「……子供じゃないんだ、ひとりで歩ける。」

 

別に名前を知らなくても困りはしない。
――彼は他人なのだから。




―――――――――――――――

しばらく、ルシアンとボリスの間が寒々しいです。

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ルシは気ままに放浪の旅。
ボリスはCP10まで完了。

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