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TWのプレイ記と二次創作が転がってます。
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拍手ぱちぱち、ありがとうございます。
ぱちぱちでエネルギー補給させていただきました。

それにしても
は、はちがつが終わってしまう……

2週間も空けといて何ですが、先日の『風の夢』の対(のつもり)の話を
埋めておきます。

前はボリス、今回はルシアン。
前回と同じく、ルシアンCPのネタバレを多大に含んでおりますので
続きを読まれる際にはお気をつけください。
あと、前のに比べて妙に話が長いです。


OKですという方は、

埋め立て地↓



夜の夢



ベリーをたくさん使ったジャムが入っているデニッシュ
生クリームとカットフルーツで彩られたサヴァラン

「こら」

ガラス越しにそれらに魅入っていたところへ、
後頭部にぺしりと手のひらが当てられてルシアンは我に返った。
反射的にその手のひらを掴んで横を見やると、同じように
ケースの菓子を覗き込むボリスがいる。

「ふらふらと消えるから何をしているのかと思えば……」

幼子でもないのにケーキ屋のショーウィンドウに貼り付く青年。
ルシアンの子供っぽい行動にボリス自身は慣れているが、
ものすごく嬉しそうに店の前に立たれていると目立つ事この上ない。
ケーキのひとつやふたつくらい買えるお金は持たせているのだから、
突っ立っていないで早く買えばいいものを。

ボリスはルシアンの襟首を掴んで店の前から引き剥がした。
ほとぼりが冷めたころに買いに来させる事にして。

「あ、ちょっと。ねぇボリスってば」

後ろ向きに引きずられるのを何とか歩数を合わせて前に向きなおり、
片手は自分の襟首を掴むボリスの手を、もう片方は彼の服を引っ張って
ルシアンは呼びかけた。

「美味しそうだったし、あれ食べようよ」

エーリッヒの作る菓子はイスピンすらも感嘆するほどの美味しさなのだ。
以前、ここに来た時はボリスは食べられなかった。
せっかく今一緒にいるのに、とルシアンが思ったところで
ふと足がお留守になる。

「……ん?」
「――っと」

急に歩くことを止めたルシアンに引っ張られてボリスの足も強制的に止められる。
襟首を掴んでいた手を離して何事かとボリスが傍らを見やると、
先ほどの菓子屋がある方角をルシアンはぼんやりと眺めていた。

「……ルシアン。自分を重石にしてまで俺を止めなくても」
「え?あぁごめん」

謝る言葉もどこかうわの空で、ルシアンは人差し指を額に当ててまだ首を傾げている。

気になるものがあるのは結構だが、その対象がケーキ。
夕食まではまだ時間があるし、今食べても差し支えはないけれど
足を止めて考え込むほどの内容かと少し呆れてボリスはため息をついた。
ルシアンに動く気がなさそうなのでボリスもそれ以上歩く事を諦めて、
引っぱったせいで妙な形になっているルシアンのコートの襟を
手を伸ばして両手で整えながら言う。

「そんなにさっきの菓子が食べたいのか?」
「お菓子じゃなくって、えっと……」

引っかかったのはそっちじゃないとルシアンは首を振る。
何が気になったのかと先ほどまでの出来事を反芻し、
ボリスの顔を見ながら言葉の続きを探す。

色とりどりのお菓子。
雪の積もる街。
音の無い静かな場所。
ボリスだっていつもと同じで……

でも、何かおかしいとさっき思ったのだ。

「――何だと思う?」
「俺に聞いてどうするんだ」
「そうだよねー」

行動パターンは読めても、さすがにルシアンの頭の中までは把握できない。
再び腕を組んで考え出したルシアンにやっぱり菓子じゃないのかと
苦笑しながらボリスは言った。

「お前の甘い物好きは相変わらずみたいだし。
 そう言えば屋敷でもドメリン様と一緒によく甘いものを食べていたな」
「……あ!」

その言葉が呼び水となる。
違和感の正体や今までの本当の出来事。
それら全て、水の波紋が広がるようにルシアンの頭に鮮明によみがえった。

知らなくて当然だ。
あの時にボリスは一緒にいなかったのだから。

甘いもの好きは遺伝するのかというボリスの意見に
ルシアンはふるふると首を横に振る。

「違ったか?」
「ううん、僕もそうだと思ってた。
 でもねぇ、お父さん実は甘いもの好きじゃなかったんだよ」
「そうなのか……ルシアンと食べておられたからてっきり好きなのかと。
 何で嫌いだとわかったんだ?」
「お父さんがそう言ったから」
「お前に?」

ルシアンの将来を多少憂いているとはいえ、あの父親は基本的に息子に甘い。
その息子が好きだというものを、あえて嫌いと表明するのだろうか。
じっと見つめるボリスの視線に、曖昧な笑顔でルシアンは肯定した。

「んー……うん、そんなところ」

ちょっと違うけれどと続きは心の中でルシアンは呟く。
ナルビクで会った時に、ルシアンが自分の息子だと覚えていたら
ずっと知らないままだったかもしれない父親のこと。
イスピンはルシアンが好きなものだから父も好きだと言ってくれたんだと
慰めてくれたけれど。
それ以上の追及を逃れるためにぱちん、と手を合わせて会話の流れを断ち切って
無理矢理最初の話にルシアンは戻した。

「あ!そうだ。ボリスは食べるよね。さっきのお菓子」
「……あれば食べるけど」
「わかった!買ってくるからそこで待ってて!」
「ルシアン?」

そう言い残してぱたぱたと慌しくその場をルシアンは離れた。
何かと鋭い親友にそれ以上悟らせるわけにはいかない。

今、聞かれるとちゃんと普通に答えられる自信がルシアンには無かった。

 

 


「あー、危なかった」

両手を膝につけてしゃがみ込んで、大きく息をつく。
せめて今ボリスといる間くらい、皆に、父親に忘れられてしまった事も
自分が忘れたままでいられたら良かったのにと思い出してしまった自分を
ルシアンは少し恨めしく思った。
海の谷で、落ち込んだ素振りなんてボリスに再会した時には見せないと
決心したのになんてほどけやすいことか。

「……変わってなかったなぁ」

しゃがんで俯いたままへらりとルシアンは顔を緩める。
離れ離れになって何ヶ月も何年も経ってしまった訳ではないから、
きっと本物に会っても同じだろうけれど。

全体から見たら変わった事は少ないのかもしれない。
街の場所も、そこにいる人たちも、あの人たちの繋がりも、
それらはそっくりそのままで、切れてしまったのは自分と世の中との繋がりだけで。
ティチエルやイスピンと会って、仲間との縁は変わっていないことは
分かっていたけれど、それでもボリスが変わっていないことが
ルシアンは嬉しかった。

立ち上がってコートの裾をぱたぱたと叩いて伸ばし、膝から手を離して
両頬を叩いて自分に活を入れた。
とりあえず買ってくると宣言をした菓子を手に入れて、ボリスの元へ
帰るまでには心の整理はつくだろう。
まだあの場所にいてくれたら、の話だが。

「よし、戻ろっと。とりあえずボリスが気づいていませんように」
「何にだ?」
「わっ!?」

うしろから来た返答に思い切り肩を跳ね上げてぐるりと振り向きかけたが、
すぐ背後にいた人物にぶつかって雪に足を滑らせた。
即座に伸ばされた手に両腕を掴まれて、どうにか転倒する事は踏みとどまったが
そろそろと視線を上げると少し不機嫌そうなボリスの顔が見えた。

「かっ、買ってくるから待っててって言ったのに!」

心臓に悪かったのと、滑った自分が情けないのとでルシアンは
八つ当たり気味に絶叫したが、ボリスさらりとそれ聞き流した。
ルシアンが体勢を立て直したのを見ると腕から手を離して、
店のある方角を視線で示して言う。

「自分で行くって言っておきながら、目的地を通り過ぎてどうするんだ」
「え、あ?」

ぱちくりとまばたきをひとつしてルシアンが周囲を見回すと、
街灯が一本立っている、小さな空き地のような場所に自分達はいた。
確かにエーリッヒの店はここに来るまでの通りに立っている。
くき、と顔をボリスに戻すと照れ笑いをしながら感想を述べた。

「……ちょっと遠回りだね?」
「ごまかすならもう少し上手くなってからにした方がいい」
「うく……」

すぱすぱと斬り込んでくるボリスに言葉を詰まらせてルシアンは
がっくりと肩を落とした。
先ほどの浮いた気分もどこへやら、
容赦が無いのもどうやら変わっていないらしい。

「ボリスー……別に僕、ごまかしてないよー……」
「隠し事をしているだろう」
「……やっぱりばれてる?」
「ルシアンは顔に出やすいからな」
「見なかったことにしない?」
「しない」
「う~……」

思い出してすぐは確かにちょっと挙動不審になってしまったけれど、
皆に忘れられてしまった事以外にも、思い出せたことがあった。
ボリスを安心させるための作り笑いなんかではなくて、
自然と顔がほころぶような。

「本当に大丈夫だから、気にしないでよ」

笑いながらルシアンは言ったが、ボリスは納得していないようだった。

「もし俺と同じなら。ルシアン、お前も――」
「ボリス」

なおも言いつのろうとしたボリスの口を片手で塞いで止める。
おそらくボリスが言おうとした事は『正解』だろう。
でもそれに続く言葉を聞いてしまうと、もしかしたらボリスに
甘えてしまって自分が動けなくなってしまうかもしれないから。

「僕ね、ちゃんと頑張ることにしたんだよ」
「……?」
「ボリスに、胸を張って会えるように自分の力で何とかしていこうって」

落ち込んでなんかいられない。
立ち止まってなんていられない。
もう一度そばにいて欲しいから、前に進まなければ。

ボリスが口を閉じたのを感じて、ルシアンはそっと手を離した。

「だから心配しないで、ボリスはボリスのことを考えてよ」
「……今、お前が何を言ってもそれを咎める人はいない」
「それでも、言わない。
 僕にも意地っていうものがあるからね」

たとえ夢の中で、好き勝手できても。
ここで言ってしまったら何の意味も無くなると思うから。

「――いつの間にそんなに頑固になったんだ、ルシアン?」

苦笑と共に落とされた言葉だが、どうやら納得させられたようだった。

「さあ?ボリスに似たんじゃない?」

ボリスに不敵に笑ってそうルシアンが返すと、そんな訳がないだろうと
笑いながらボリスが言う。

「あ、でも。ボリス、一個だけいい?」
「うん……?」

もう少し、夢が覚めないで欲しいと思いながらルシアンはマントの下の
ボリスの腰に両腕をまわしてきつく抱きついた。
歪みそうになる顔をボリスの肩口に埋めて、ごまかす様にくすりと笑う。

「変なの」
「何が?」
「ちゃんと感触があるなぁ、って」
「当たり前だろう、抱きついてるんだから」
「そうだね」

忘れてしまわないように、しっかりと手に刻み付けて。
そろそろ終わりかな、なんて思いながら。

「ボリス、僕のこと探してくれただろ」
「……」
「会えたらもう一度言うけど……ありがとう」

 


それがわかったから、僕は大丈夫なんだ。

 



ごち、と鈍い何かがぶつかる音。
ティチエルがくるりと音のした方を見ると、きぃ、と揺れる木の看板の下で
ルシアンが顔面を押さえてしゃがみこんでいた。

「ルシアン?!だいじょうぶ?」
「へ、へーきへーき……ったー」

火花が散ったと涙目になりながら半笑いになると、
ティチエルが少し赤くなったルシアンの額をそっと撫でた。

「よそ見でもしてたの?」
「うん、あれを見てたらぶつかっちゃった」

すっと指差した先にはエーリッヒの洋菓子店。

「美味しかったから、次は皆と一緒に食べたいなぁって思ってたんだ」

結局、ボリスとは食べられなかったから。
どうせ次に来ることがあるなら皆で。

「はい。ミラお姉さんにも食べてもらいたいです」
「そうだね」

にっこりとティチエルと笑いあって立ち上がる。

 


うん、大丈夫
絶対もう一度会えるから



―――――――――――――

『走り抜けていく[風]がルシアンなら
 ボリスは[夜]で良いじゃない安眠できるし』

そんな感じのタイトルです。

ガレット・デ・○ワがあるんだからサバ○ンやデニ○シュも
あの世界にはありますよ、たぶん……
 

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ルシは気ままに放浪の旅。
ボリスはCP10まで完了。

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